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掲載日付 | 2023/08/18(金) |
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掲載媒体 | 神戸新聞 |
神戸・灘の卸売問屋 栗須さんが指南
小学校区単位で開催
「日本の夏」を象徴する風物詩と言えば、花火。新型コロナウィルス感染症の5類移行に伴い、今年は4年ぶりの花火大会に沸く地域もあれば、警備や物価高騰などを理由に再開を断念した大会もある。そんな中、地域の花火大会文化を守ろうと、小学校区単位などで「手作り花火大会」を企画する「仕掛け人」が神戸市灘区にいる。「心に火をつける花火師」をうたい、資格や免許の不要な玩具花火で盛り上げてきた。「たかが玩具」と侮るなかれ。その熱意と完成度は想像を大きく超えていた。
■夕方、準備が始まる
仕掛け人の名は、栗須哲秀さん(47)。同区烏帽子町3の国道2号沿いにある「神戸の花火・景品玩具卸売問屋クリス」の社長だ。
7月末の日曜午後4時過ぎ、店先に連なる赤ちょうちんに明かりがともった。店内には、金魚すくい用の「ポイ」や原色カラーのブーメランなどとともに、手持ち花火や打ち上げ花火がところ狭しと並ぶ。客がかごを手に、1本単位で好みの花火を吟味していた。
「花火の用意ができたので、これから学校へ向かいます」。栗須社長が大きめの段ボール3箱を台車に載せ、店から運び出してきた。この日、渦が森小学校(神戸市東灘区)で開く大会用の花火が詰まっていた。
栗須さんが2012年から始めた取り組みで、コンセプトは「大人達が作る子ども達への花火大会」。地元の協議会などが主催する花火イベントを支援し、保護者や中高生らに花火師役を担ってもらう。開催は毎年7~9月に10回程度。県内を中心に、過去には大阪府や香川県でも実施し、今年7月には50回を超えた。いずれも無事故で成功させ、今夏中に明石市や播磨町でも実施予定だ。
■会場は学校グラウンド
午後5時過ぎ。栗須さんは渦が森小学校に到着した。校庭では会場設営が進み、花火師役の立ち位置や花火の設置場所を示す白線が引かれていた。今回は青少年育成協議会渦が森支部のメンバーを中心とする実行委員会が主催した。
今回用意したのは大小さまざまな全6732発。花火師役として集まった保護者や高校生らが空調の効いた涼しい部屋で「仕掛け作り」を始める。長細い筒から火の粉が噴き出す「噴出花火」や打ち上げ花火を、栗須さんが用意した木枠に固定していく。
複数の花火を間髪入れずに打ち上げていくスピード感と臨場感で「大会」を演出する。「花火は連携が何より大切」と栗須さん。夜の暗がりで手際よく着火できるよう、導火線を一方向に向けて固定するノウハウなどを伝え回っていた。
住民や高校生や「一日だけの花火師」に
■リハーサル
午後6時半頃、リハーサルが始まった。配置図をにらめっこしながら、格子状の枠線内に花火を設置していく。2人一組のペアが6組。着火用のガスバーナーを手に並び、リーダーの笛の合図で火を付けるしぐさを繰り返していく。
その際、円陣を組み、栗須さんが花火への思いを語りかけた。
活動の原点は2001年、明石市の花火大会会場近くで起きた歩道橋事故。「小規模ながらも安心して楽しめる花火大会を子どもに見せてあげたい」。花火師役の大人たちにも「火の粉を間近にしても臆することなく、その雄姿で子どもの心に火を付けてほしい」とエールを送った。
■本番
日が暮れた午後7時半頃、1380人が集まっていた。笛の音が静寂を破り、約10発の打ち上げ花火で大会は幕を開けた。爆音の人気曲が流れ、高さ2メートルの噴出花火が周囲を照らす。
幅約3メートルのひもに花火を12本つるした通称「ナイアガラ」では、赤色と白色の火花が星屑のカーテンのように流れては、夜の空に溶けていく。続いて、火花が噴き出す花火を直径約60センチの車輪に取り付けた「車輪花火」が、渦巻き状に火花を散らした。勢いよく回転する車輪の軸を両手で握る花火師たちの表情を、輝く火花が照らしていた。
高さ約10メートルの打ち上げ花火の後、緑、赤、青色が何度も打ち上がる連発花火などが続き、いよいよフィナーレに。Y字に固定した156本の花火を同時に放つと、打ち上がった色とりどりの閃光が夜空で幾重にも交差した。
約20分間の全演目が無事終了し、観客の歓声と火薬の臭いがグラウンドを包んだ。「この歓声がたまらないんです」。栗須さんと「1日だけの花火師たち」が口をそろえ、満面の笑みで片付けを急いだ。(末吉佳希)
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